少子高齢化や人口減少が進む日本では、実店舗の人手不足や消費者数の減少が、アパレル業界を含む小売業界の課題として懸念されています。業界が抱える課題の解決策には OMO 戦略やサステイナビリティへの取り組みが挙げられますが、特にアパレル業界では、オムニチャネルの導入が注目を集めています。
本記事では、今後を生き抜くため、日本のアパレル企業ができる対策の 1 つとしてオムニチャネルを紹介し、その重要性や店舗スタッフが気をつけるべき点について解説します。
目次
- オムニチャネルとは
- アパレル業界の市場規模
- アパレル業界でオムニチャネルが重要な理由
- オムニチャネルで店舗スタッフ側に求められること
- アパレル事業のオムニチャネル成功事例
- Stripe Terminal でできること
オムニチャネルとは
オムニチャネルの「チャネル」とは「販売チャネル」のことで、販売活動における企業とユーザーの接点や媒体を意味します。販売チャネルの具体例には以下が挙げられます。
- 実店舗
- EC サイト (EC モール・アプリを含む)
- SNS
- アプリ
- メールマガジン
- DM
- カタログ・雑誌
- テレビ CM
- 広告
つまり、オムニチャネルとはこれらの接点 (チャネル) を連携・統合させて、あらゆるチャネルで消費者へのアプローチを行う販売戦略を指します。これにより、消費者はどのチャネルからでも一貫性のある購買体験ができるようになり、企業としては顧客満足度の向上と販売機会の増加が期待できます。
シングルチャネルとの違い
シングルチャネルとは、企業と顧客の接点が 1 つの限定的な販売チャネルを指します。たとえば、以下のようなものがシングルチャネルに該当します。
- 個人商店
- カタログ販売
- オンラインストア
したがって、オムニチャネルとは異なり、情報発信元や販売方法といった顧客との接点は 1 つに限られているため、販促活動としてできることも限られます。しかし、ほかでは手に入らない貴重な品物など、特別感が得られやすくユニーク性の高いものであれば、シングルチャネルによるアプローチが効果的なケースもあります。
マルチチャネルとの違い
オムニチャネルとマルチチャネルの違いについて疑問を抱く方は少なくはありません。実は、これら双方の基本的概念は同じです。
先ほどの解説のように、オムニチャネルとは複数の販売チャネルのデータを統合する販売戦略を意味します。一方、マルチチャネルとは単純に、複数の販売チャネルを提供する戦略を表す言葉です。つまり、マルチチャネルの場合各チャネルは独立しており、チャネル間での連携は行われていない状態です。
したがって、マルチチャネルでは各チャネル上での認知度や売上の拡大は期待できるものの、各チャネルごとの販売戦略、情報管理、人材が必要となるため、コスト負担や業務過多などの問題が生じる可能性があります。
クロスチャネルとの違い
クロスチャネルとは、まずマルチチャネルによって企業・ユーザー間の接点を複数提供し、かつ各チャネルの情報を連携させる戦略を指します。たとえば、EC サイトからの注文商品を、最寄りの実店舗で受け取るサービスは、クロスチャネルに該当します。
クロスチャネルとオムニチャネルの違いは、クロスチャネルの場合、オムニチャネルのように顧客情報、ポイントなどが一元管理されていない点にあります。そのため、顧客は一貫して使い勝手のよい同じ販売チャネルのみを利用する傾向にあります。
一方、オムニチャネルでは、各チャネルを統合的に連携させている点が特徴的です。つまり、クロスチャネルよりも深く、強力な連携によって、顧客はよりシームレスで利便性の高い購買体験ができるのが、オムニチャネルとなります。したがって、オムニチャネルとはクロスチャネルから一歩前進したものといっても、過言ではないでしょう。
ユニファイドコマースとの違い
ユニファイドコマースとは、顧客情報を統合的に管理し、1 人ひとりにパーソナライズされた価値ある購買体験を提供するという考え方です。ユニファイドコマースでは、EC サイトや実店舗で取得した会員情報、閲覧履歴や購買履歴、問い合わせ履歴、ポイント利用履歴などのあらゆるデータを一本化することで、個々にとって最適なアプローチを可能にさせています。たとえば、これらのデータをすべてリアルタイムで共有すれば、消費者はどの販売チャネルで購入しても同じショッピング体験を実現することができるようになります。
ユニファイドコマースでは「オムニチャネルのデータを統合する」ことを基盤としています。したがって、オムニチャネルの形成こそ、ユニファイドコマースを推進するための土台といえるでしょう。
また、オムニチャネルには「パーソナライズされた最適なアプローチ」というユニファイドコマースの概念は含まれておらず、オムニチャネルはあくまで複数の販売チャネルを統合するマーケティング戦略となるため、これが両者の大きな違いです。
アパレル業界の市場規模
ここでは、株式会社矢野経済研究所が 2024 年に実施した、国内アパレル市場規模の調査結果を参考に見ていきましょう。
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2019 年: 9 兆 1,732 億円
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2020 年: 7 兆 5,158 億円
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2021 年: 7 兆 6,105 億円
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2022 年: 8 兆 591 億円
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2023 年: 8 兆 3,564 億円
上記の調査結果によると、アパレル市場規模は 2020 年 にコロナ禍の影響で前年割れとなったものの、2021 年以降は 3 年連続で前年を上回っています。販売チャネル別では、百貨店、専門店などの実店舗の回復が顕著で、これは、コロナ禍の終息とともに外出機会が増えたことで、衣服の需要が高まったためとしています。一方でコロナ禍中に急成長を遂げた EC については、コロナ禍終息後の成長は緩やかなものとなっています。
なお、今後数年はコロナ禍前の市場規模水準に向けて、アパレル市場は着々と回復していくとの予想が立てられています。長期的視野では少子高齢化や人口減少が加速するにつれ、アパレル市場は緩やかに縮小していくことが懸念されていますが、継続的に労働賃金が上昇すれば、衣料品支出金額の増加が期待できるとしています。
アパレル業界でオムニチャネルが重要な理由
アパレル業界の課題を解決するにあたって、オムニチャネルが必要とされる主な理由については以下のとおりです。
売上増加
オムニチャネルの実行目的の 1 つに、少子高齢化や人口減少に立ち向かい、売上増加を図ることが挙げられます。利益の最大化を目指すにあたって、顧客 1 人あたりの購入単価や購入回数を上げることは欠かせません。オムニチャネルなら、実店舗とインターネット (EC) のデータ統一化によって、顧客を囲い込むことができるため、購入機会の損失防止策としての効果が見込めます。
人手不足の解消
人手不足は、アパレル業界が抱える大きな課題です。この人手不足を解消するための手立てとしても、オムニチャネルは注目を集めています。
オムニチャネルによって数々の販売チャネルから取得した情報を一元管理すれば、在庫管理・注文管理における業務効率化と円滑化の実現が可能になります。また、EC サイトの利用を促進することで、店舗スタッフの業務負担の軽減にもつながるでしょう。
たとえば、実店舗と EC サイトの在庫データが一元化されると、店舗スタッフはモバイル端末を用いて迅速に在庫確認が行えます。そのため、実店舗で商品の在庫切れが発生した場合でも、顧客を EC サイトや最寄りの他店舗へと誘導することができます。
スマートフォンユーザーへの対応
スマートフォンの普及以前は、流行やセール情報について、紙の広告やテレビ、ファッション誌から情報を得るのが主流でした。しかし、今日ではスマートフォンを介した情報収集が一般的となっています。
スマートフォンなどのモバイル端末さえあれば、ユーザーはファッションに関する情報を 24 時間いつでも好きなときにチェックすることができます。たとえば、EC サイトの会員であれば、メールやプッシュ通知からセール情報や新着アイテム情報を受け取ることができますし、SNS からもお気に入りのブランドや店舗による投稿を気軽にチェックすることができます。
こうした中、オムニチャネルで複数の販売チャネルのデータを統合すれば、実店舗や EC サイトに関係なくシームレスな購買体験を提供できるため、スマートフォンを活用する多くの顧客の満足度向上が期待できます。また、これによって購入単価や購入回数が増える可能性も上がるでしょう。
的確なマーケティング戦略が可能
オムニチャネルなら、さまざまな販売チャネルのあらゆるデータをまとめて蓄積できるため、実店舗や EC サイト単一では成し得ないより細かいデータ分析が行えるようになります。
一例として、実店舗の商品に QR コードを付けて、顧客がそのコードをスキャンすると、商品の詳細情報やレビューの確認ができる仕組みがあります。これにより、企業側は実店舗で顧客がどんな商品に関心があるかを把握でき、こうしたデータをマーケティング戦略に活かすことができます。
また、複数の販売チャネルでの情報収集機会を増やすほど、データが多く集まりやすくなるため、より的確な戦略を行うことができるでしょう。たとえば、収集データに基づいて、各顧客のニーズに沿った商品提案や、消費行動パターンに見合うセール企画の実施にも役立ちます。
オムニチャネルで店舗スタッフに求められること
ここでは、オムニチャネルを導入するにあたって、店舗スタッフが考慮すべき点について解説します。
スタッフ育成
オムニチャネル施策を実施する際には、実店舗の各スタッフが円滑に対応できるよう、育成に力を入れることが大切です。具体的には以下のような点が挙げられます。
- EC サイトから購入された商品を実店舗で渡す際の手順
- EC サイト・実店舗間で可能なサービスの案内
- 勤務中に使用するデジタルツールの操作方法
適切な在庫管理
EC サイトから注文した商品を実店舗で受け取り可能にすることで、実店舗の商品が在庫切れとならないよう注意が必要です。そのため、店舗スタッフは在庫状況を常に把握しながら、実店舗での受け取り件数を日々確認しておくようにしましょう。
アパレル事業のオムニチャネル成功事例
無印良品
幅広い世代から支持を得ている無印良品では、アパレル事業の強化に力を入れています。同社では、オムニチャネル戦略の一環として「MUJI アプリ」というスマートフォンアプリを展開しています。
小売店が提供するスマートフォンアプリといえば通常、アプリ経由でのオンラインショッピングや、注文の追跡、注文商品のレビュー投稿といった、EC に紐づく機能が主流と思われるかもしれません。MUJI アプリ の場合、これらの機能に加え、「MUJI GOOD PROGRAM」と呼ばれるポイント獲得プログラムが導入されています。このアプリ上のプログラムこそが、顧客を EC サイトだけでなく実店舗へと誘導する流れを生み出しています。
無印良品のポイント獲得方法には、レビュー投稿やお気に入り商品の登録など数多くの方法があります。これに加え、実店舗を巻き込んだオムニチャネルに特化したプログラムの取り組みとしては、以下のようなものがあります。MUJI アプリの会員はこれらを実行することで、ポイントを獲得できるようになっています。
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商品の購入: 実店舗・オンラインショップでの買い物
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マイバッグ持参: 実店舗での買い物時にマイバックを利用
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チェックイン: 現在地に基づいてアプリ上で表示されるチェックイン可能な店舗に「チェックイン」をタップ
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環境循環活動 (ReMUJI) への参加: 不要になった商品をリユース・リサイクルに回すため、実店舗で引き取ってもらう
なお、獲得ポイントはオムニチャネルによって統合されているため、EC サイト・実店舗に関係なくどちらでも利用可能です。このような両者の境界を越えてサービスを利用できる点も、大きなメリットといえるでしょう。
さらに、MUJI アプリ自体としても、以下のようなオンライン顧客とオフライン顧客の双方を取り込むための、相乗効果を活かしたサービスが提供されています。
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実店舗の在庫検索: 欲しい商品がどの実店舗で販売中か検索可能
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アプリ限定特典: アプリ会員限定の優待やクーポン配布
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バーコードスキャン: 実店舗での買い物中商品の購入を迷った場合、バーコードをスキャンすることで商品の詳細情報やレビューを確認できる
ユニクロ
オムニチャネル戦略として、オンラインとオフラインを統合させた取り組みを効果的に実践しているのが、2 つ目に紹介するユニクロです。
日本だけでなく世界各地に実店舗を構えるユニクロでは、オムニチャネルの取り組みとして買い物アシスタントの「UNIQLO IQ」を導入しています。UNIQLO IQ とは、AI チャットボットによる接客サービスで、以下のような機能が搭載されています。
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注文に関する相談: オンラインで購入した商品に関する、実店舗での受け取り期間の延長リクエストなど
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アイテムの提案: 顧客のファッションテイストや、関心のあるジャンルなどを参考にしたおすすめのコーディネート・アイテムの提案
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サイズの相談: 自分に合うサイズがわからないときに IQ がサイズ選びをアシスト
これによって、店舗スタッフだけではカバーしきれない顧客の悩みや要望でもチャットボットによる対応が可能なだけでなく、企業側はより綿密な顧客のニーズや購買行動・商品検索データなどを収集することができます。
また、アプリ自体にも、実店舗利用を促進させるための以下のような機能が備わっています。
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実店舗の最新情報: アプリ内に保存中の実店舗の新着商品について確認
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実店舗の在庫確認: アプリで閲覧中の商品について、周辺の実店舗での在庫状況を確認
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実店舗の基本情報: 実店舗の場所や営業時間の確認
アプリの実用性が向上すれば、顧客は実店舗および EC サイトでの買い物をより快適に楽しむことができます。このようにユニクロでは、実店舗に興味を持ってもらうことを目的とするアプリ上のさまざまなサービスが、オムニチャネル戦略の一環として活かされています。
Stripe Terminal でできること
Stripe Terminal はユニファイドコマースのためのソリューションです。対面チャネルとオンラインチャネルを統合し、収益拡大を実現させます。新しい支払い方法、シンプルなハードウェア、グローバルな対応、数百の POS とのコマース連携により、理想的な決済環境を構築できます。
Stripe は、Hertz、URBN、Lands’ End、Shopify、Lightspeed、Mindbody などのユニファイドコマースを強化しています。
Stripe Terminal の特徴
ユニファイドコマース: オンラインと対面での決済をグローバルプラットフォームで一元管理します。
グローバル展開: 1 つのシステムと一般的な決済手段で、24 カ国への拡大が可能です。
自社に合った導入: 独自のカスタム POS アプリを開発するか、サードパーティの POS や EC システムを使って既存のテックスタックと連携できます。
シンプルなハードウェア: Stripe 対応のリーダーを注文、管理、監視できます。
Stripe Terminal について詳しくはこちらをご覧ください。今すぐ開始する場合はこちら。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。