ドイツの企業は通常、サービスを完了した後に顧客に請求書を発行しますが、前受請求書などを使用して、サービス提供前に請求し、後から作業することもできます。
この記事では、前受請求書の概要、前受請求書の法務要件、帳簿に正しく計上する方法について解説します。また、前払額を最終請求書で相殺する方法、特別なケースへの対処方法、および注意すべき監査リスクについてもご説明します。
この記事の内容
- 前受請求書とは
- 前受請求書の発行要件
- 前受請求書の記帳要件
- 前払金は最終請求書でどのように相殺されますか?
- 特殊なケース: 前受請求書と VAT
- 前受請求書に関連する監査リスク
前受請求書とは
前受請求書とは、その名の通り、企業が今後提供するサービスやサプライに対して前払いを受けるために発行する請求書を指します。すでに実行された作業を含む分割請求書と異なり、前受請求書は作業が始まる前に発行されます。
ドイツでは、大規模受注や大規模プロジェクトで前受請求書が使われることが多く、事前に資金を確保して不払いのリスクを抑え、サプライヤーの流動性を保護する目的があります。ベンダーはサービスまたは供給が完了したときに、前受金を最終請求書に充当します。
前受請求書と付加価値税
こうした前払いも他の取引と同様に課税対象となります。つまり、前受請求書には付加価値税 (VAT) を含める必要があります。ドイツ VAT 法 (UStG) 第 13 条では、VAT はベンダーによる前受金の受け取り時、つまり顧客が前受請求書に対して支払いをした時点で発生します。サプライヤーは、サービスや供給が完了していなくても、税務署に VAT を納付する必要があります。前払金については、企業が課税目的で発生主義と現金主義のどちらを採用するかにかかわらず、入金が確認された時点で VAT の納付義務が発生します。
仕入税控除の対象となる企業は、支払いを済ませ次第、その税額を差し引くことができます。前払い請求書はその際の証拠となるものです。したがってサプライヤーには、仕入税控除の対象となる課税事業者であるすべての取引先に対して前払請求書を発行する義務があります。控除対象とならない顧客はこの義務の範囲外となります。
前受請求書の発行要件
前受請求書には通常の請求書にはない要件があります。1 つ目の要件は、それが「前受請求書」であることを明記するということです。それにより請求書を受け取った顧客は前払いが必要だということを理解できます。2 つ目は、予定される役務提供期間を明記することです。役務提供期間が未定の場合には、前受請求書にそのように記載する必要があります。そして 3 つ目の要件として、サービスおよびサプライの詳細をなるべく詳しく記載する必要があります。
さらに UStG 第 14.4 条によると、請求書に必要なその他の必須情報も記載されていなければなりません。具体的には次のようなものです。
- 売り手の正式名称と住所
- 買い手の正式名称と住所
- 連続した一意の請求書番号
- 請求書の発行日
- 税務署が売り手に対して発行した納税者番号、またはドイツ連邦中央税務局が発行した VAT 識別番号
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純額および総額
- 適用される税率および税額、または非課税の場合にはその根拠
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前受請求書の記帳要件
前払請求書を記帳する際には、前払い金額と前受金額とを明確に区別する必要があります。会計上、前受請求書はお金を受け取る側であれば前受金、支払う側であれば前払い金として扱われます。
前払金の支払い
ベンダーに前払いする場合、商品の提供や作業がまだ行われていないため、まず前払金として記録します。資金がすでに口座から引き出されている一方でサービスは未完了の状態であるため、貸借対照表では資産として計上されます。納品が完了した時点で、サービスやサプライの性質に応じてその前払金を費用に振り替えるか、引き続き資産として認識します。
前払金を記録するには、複数の手順があります。
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前払金の記帳: 最初の支払いがサプライヤーに送金されたら、それを前払いアカウントに記帳します。
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最終請求書の記帳: 納品が完了したら、サプライヤーの最終請求書を計上します。
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前払金の相殺: 前払金として支払われた金額を、サプライヤーの請求書合計額から差し引きます。
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最終支払いの記帳: 残額を最終的な支払いとして記帳します。
前受金の受け取り
前受金を受け取る場合、前受請求書が発行済みか否かに関わらず、着金したらすぐに記帳します。重要なことは顧客の支払いがお客様の事業用銀行口座に入金されたということです。
前受金にかかる VAT は申告期間中 (前受金を受け取った期間) に納付する必要があります。つまり商品やサービスの提供前に納税するということです。
前受金の記帳には、いくつかの手順があります。
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前受金の記帳: 前受金が着金したら、商品やサービスの提供がまだ行われていないため、すぐに負債として計上します。
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最終請求書の記帳: 供給が完了したら、最終請求書を作成し、前受金を合計金額から差し引きます。
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前受金の精算: 前受金の金額を最終請求書に振り替えることで、負債を消し込みます。
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最終支払いの記帳: 前受金を差し引いたら、残額を売掛金として記帳します。
前払金は最終請求書でどのように相殺されますか?
前払金は後日発行される最終請求書上で正確に相殺する必要があります。それは、実際に支払われるべき金額より高い金額を顧客に請求するというミスを避けるためです。また、VAT が残額にのみ課されていることを確認することもできます。
前払金の相殺
最終請求書では、総額から事前に支払われた前払金を差し引きます。最終請求書では顧客に残金のみを請求するようにします。さもないと二重払いが発生することもあり得ます。
VAT の計算
最終請求書から前払金を差し引くと、VAT は残金に対してのみ課されます。つまり、課税対象が元の総額ではなく、前払金を差し引いた残金だけになるということです。
計算例
例を挙げましょう。貴社が建設プロジェクトを行っていて、ベンダーとサービスの総費用が €50,000 になるとします。貴社が建築資材を調達できるように、顧客は前払金として €10,000 をすでに支払っています。その場合、最終請求書では税抜総額から前払金を差し引いて残額を算出し、その差額に対して VAT を加算します。
供給とサービスの純合計額: €50,000
前払金: €10,000
未払金純額: €50,000 – €10,000 = €40,000
未払合計額に課される VAT (19%):
€40,000 * 19% = €7,600
最終請求書の合計金額:
€40,000 + €7,600 = €47,600
特殊なケース: 前受請求書と VAT
前受請求書の発行と相殺には次のような特別なケースがありますので、ご留意ください。
現金割引を適用した前受請求書
貴社と顧客との間で前払いの合意ができている場合、現金割引を提供できます。この場合、最終請求書には必ず割引後の支払金額を記載してください。割引後の金額ではなく全体の総額を記載すると、顧客は合意した金額より多く支払わなければならなくなります。
物々交換取引の前受金に対する課税
サービスまたは供給に対する支払いが金銭的な対価ではなくバーター取引の形で行われることがあります。バーター取引にも VAT が課され、事前に受け取った対価に基づいて徴収されます。非金銭的対価の場合は、その市場価値に対して課税されます。
例を挙げましょう。正味 €10,000 の価値がある機械を受け取る対価として建設作業を行うとします。建設作業が始まる前に機械を受け取った場合、その機械の市場価値に基づいて VAT を徴収する必要があります。しかしながら、この取引相手はサービス (建設作業) を受け取るまで仕入税の控除を申告することができません。
前受請求書に関連する監査リスク
ドイツ企業が法的および税務上のリスクを回避するためには、前受請求書を正しく扱うことが重要です。誤りがあると、滞納や罰金が生じるだけでなく、税務当局から企業または税務監査を受ける恐れがあります。このような監査責任にも細心の注意を払いましょう。
誤った納税期間に VAT を割り当てた場合
前受請求書に記載される VAT は前払いが行われた時点で発生するため、記帳のタイミングが早すぎたり遅すぎたりするというミスが起こりやすくなります。VAT を誤った課税期間に割り当ててしまうと、本来とは異なる申告期間に納税することになり、その結果、申告が遅れたり不正確になる恐れがあります。取引が発生したらすぐに VAT を徴収し記帳しましょう。
売上の二重計上
もう一つ監査リスクとしては売上の二重計上が挙げられます。二重計上が発生しやすいのは、受領した前受金が最終請求書で適切にマイナス処理されず、前払請求書と最終請求書の双方で収益認識が行われてしまう場合です。その結果 VAT の中間申告においてエラーが発生して、税金を過大に納付する恐れがあります。したがって、正確な前受金金額を最終請求書から差し引く必要があります。
書類の不備
前払請求書は正確に作成する必要があります。発行された、または受け取った請求書類、または授受される金額が不正確だったり不備があったりすると、監査の際に問題を引き起こす恐れがあります。さらに金融当局が貴社の VAT の納付や仕入税の還付を認めないということも起こり得ます。関連する書類 (銀行明細書、支払確認書、領収書など) は正しく保管し、いつでも追跡できるようにしましょう。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。